昔書いていた小説

以下は、僕が学生のときに書いていた小説の断片。

今年も冬がやってきてしまいました。
やってきてしまいました。

憎らしくなるほど澄んだ空と肌寒い空気が私に冬を感じさせます。
別に冬が嫌いというわけではないのですが、今年の冬は違います。
私は大学の一回生という身分です。
まぁその身分も春になればおさらばのですが。

「こんなところに呼び出して何の用?」
パーカーにジーンズという適当に選んだ格好をした私は、昔ながらの喫茶店に居心地の悪さを感じ、いらいらしながら聞いた。
「そう焦るなって。何飲む?」
大学生活最初で最後の友人は私をなだめるように聞いてきた。
意味なきいらいらが私の口を滑らせる。
「なんでもいい。」
「アメリカンとモカ下さい。」
マスターと思われるおじさんは返事をせず、こちらに会釈で返した。

この喫茶店には音楽は流れていない。
聞こえるのはコーヒー豆を挽いている音、無機質な環境音、そのくらいだ。
それも含めて静かである。
何もしなくていい贅沢な「静」と、何かをしなければならない貧しい「静」。
2種類ある「静」のうち、私と彼の間は前者の「静」で満たされていた。